新卒理学療法士さんや学生さん方にとって最初の関門として立ちはだかるのが検査技術の習得だと思います。
評価技術は理学療法士として他コメディカルにできないオリジナルな検査なので、この評価の質によって理学療法士としての価値が左右するといっても過言ではないと思います。
昨今OSCE(オスキー)と呼ばれるテストが主流となっていて学生さんや新卒理学療法士さんが苦労して挑んでいるのをたびたび見かけますがそこに多大な時間をかけているように感じます。
自分も学生の頃と新卒の時にに経験し、とても苦労した思い出があります。しかも学生の時にもしているはずなのに臨床に出ると評価の必要な知識を改めて知ったり、試験官によって答えが違ったりなど翻弄されていました。
なのでここでは後から何度も苦労しなくていいように原著に沿って検査の目的や学習のコツをお伝えしていきたいと思います。
今回は徒手筋力検査(Manual Muscle Test 略してMMT)について各パートで学習や練習のコツをお伝えしていきます。
結論からお伝えしていきます。重要なポイントは3つです。①判定基準を理解する。②テスト肢位と代償を。③自分の体を使いこなす事(関節の運動と固定)
赤枠の練習ができればMMTについてはブレずに再現性をもって測定し続けていけるでしょう。学生さんの内から基礎を作る事も可能だと思います。
ただし検者間信頼性においては難しい場合もありますがそちらも工夫も併せてお伝えしていきます。
MMTについて各パートで学習や練習のコツをお伝えしていきます。
- MMTの意義や特徴
- MMTの注意点や検査方法
- 自分の体を使いこなす
- 実際の練習方法
- 参考文献
- まとめ
MMTの意義や特徴
①検査の意義は対象者の最大筋力を測定することにあります。
メリットは簡便であり動作能力やバランス能力とも高い相関出せているため優秀な検査と言えるでしょう。
難点は判定の4-5が検者間信頼性に問題があるという要素はあります。
②特徴としては方法がその年代によって多く変わることだと思います。
抵抗のかけ方の方法は現在は抑止テスト:break testが信頼性が高いことから採用されており、検査肢位や抵抗のかける肢位も徐々に変更されています。
当初は「抵抗自動運動テスト:Active resistance test」が採用されていました。そしてメイクテスト(Make test)も創設されていますが信頼性が低く使用はされていません。
抵抗自動運動テストActive resistance test:被験者が関節を動かしている状態に対して検査者が抵抗をかけます。被験者は最終可動域を目指して関節を動かしていきます。その動かせた可動域や出力できた力の程度を判定していく方法でした。
抑止テストbreak test:検査者は手検査肢位を保持した関節に抵抗をかけます。被験者は検査肢位を保持するように力を入れます。検査者はどの程度の抵抗をかけた時に肢位が崩れるか?(break)を判定していく方法です。
メイクテスト(Make test):被験者は検査肢位を保持します。そこに検査者が徐々に抵抗を強くしてかけていきます(3秒間程度)。どの程度の抵抗まで耐えれたかで筋力を検査する方法とされています。
MMTの注意点や検査方法
ここでのポイントは2つです。
①検査方法を上記の原著とされる肢位に準じて各項目覚えていく。
注意点:MMTの各肢位はその年代によって徐々に変化してきているので国家試験対策の事も考えるとその年代で最新の方法で学習していくのが良いと考えます。
例としてましては股関節の内旋の抵抗をかける肢位は以前は最大内旋位で抵抗をかけていました。現在は内外旋中間位で抵抗をかけるように変更がされています。
上記の様に検査方法が変更されますので注意が必要です。
②代償肢位を学習する。
代償肢位についても上記の原著に記載されているのでその通り暗記をしていってもよいのですがここではしっかりと解剖学的に理解して学習していく方法をご紹介いたします。
代償動作とはMMTで対象の筋が最大筋力を発揮しようとした際に最大筋力が足りていない時に起きると考えるとシンプルだと思います。(厳密には筋力以外にもその動作の不学習などほかの要素もありますがこの部分では便宜上黄色のアンダーマーカーのように考えます)
ではなぜ代償動作が出現するかというと抵抗負荷や自重負荷に対象の筋が耐え切れずほかの筋で補助をしようとした結果出現する事が多いです。
例えば股関節外転の代償として股関節屈曲を伴う外転が有名と思います。これは中殿筋のみでは大腿を挙上する事ができない為その他の筋を収縮して外転位を保持しようとした結果起きています。
自分の体を使いこなす
固定と運動が特にキーポイントです。
①固定
最大能力を発揮させるために近位部が固定されているほうが対象の筋は出力を発揮しやすくなるため、近位部を固定することを自分の体を使用して行う必要があります。
②運動
運動を被験者に行って頂きます。①の固定をしつつ代償動作が起きずに最大可動域まで運動が起こっているかが確認ができるポジション、かつ検査者が安定して抵抗をかけることができるポジションが各関節の運動検査の肢位ごとに必要となります。
実際の練習方法
2人一組で行うのが効率がいいと思います。そしていつも同じ相手ではなくいろいろなペアで行うことが更に良いと思います。
練習で意識するポイントは2点です。「自分の体を使いこなす」パートで記載したことと「抵抗のかけ方」の練習です。
①自分の体を使いこなす
こちらは全パートで記載した内容になりますので詳細は割愛させていただきますが、被験者によって体の大きさが違いますので色々な大きさの対象者と行うことで実際に臨床で行う際に苦労せずに検査を行えるようになると考えます。
②抵抗のかけ方→超重要です
こちらは4,5の抵抗のかけ方を練習します。特に検者間信頼性ではなく再現性をとにかく高めていく努力が必要となります。そこでまず評価の定義を確認するのが良いと思います。
ダニエルズの徒手筋力検査では5は正常という意味で考えているという事がわかります。ただ、4が良いなので判断が難しくなります。
3以下はネガティブな用語になりますので筋力低下と考えていいと思います。
なので5の抵抗を覚えるのをお勧めいたします。
例として股関節外転についてお話していきますが現在は5のテストは下腿に最大抵抗をかけ、最大外転位にてテスト肢位を保持できると5の判定となりますが下腿に自分のできる限りの力をかけてみるといいと思います。→おそらく相当下肢の力が強い方でなければ厳しいと思います。
上記の例を考えると5は正常なのであまり強すぎる抵抗感を覚えてしまうとなかなか臨床の現場では抵抗が過多となることが多くほぼ5の対象者がいないテストとなってしまう事が多いです。
※ここで注意点:よく最大抵抗を与えて少し下がっても下がりきらなければ5判定している方がいますがそれは本検査の方法とは異なりますのでご注意ください
なので最大抵抗とされる抵抗力をしっかり体で覚えることが必要となります。熟練が必要と本検査にも記載がありますので練習をしましょう。体格も違いますので対処法は人それぞれとなります。
ただし一度コツをつかむと間違えは無いのでぜひ練習してみてください。
参考文献
新・徒手筋力検査法 原著第8版 Helen J.Hislop,jacqueline Montgomery 著
理学療法評価のピットフォール 中山恭秀 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/41/8/41_KJ00009647373/_pdf
終わりに
MMTについて特徴や方法、練習方法などをご紹介してきました。
暗記して方法だけ覚えるのはいいですが臨床の場でなかなか使えなかったり、オスキーの失敗、国家試験で苦労をするなどがありますのでそうならないようにおススメの方法や理解して覚えていけるように解説してきました。
繰り返しになりますが評価方法は暗記のように覚えるだけではなくアカデミックにしっかり内容をかみ砕いて学習する事をお勧めいたします。
何かご質問して頂ければ必ず答えられる範囲でお答えしていこうと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
今回はこれで終わりですー
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